ざっくり雑記

ざっくりとした雑記です

スノーボールアース

数億年前の大昔、地球にはヘドロみたいな単細胞生物の集まりしか生物がいなかったのに、ある時期を境に爆発的に生物種が増加した。

 

なぜそんなことが起こったのかという理由の一つとして考えられている、地球が丸ごと凍ってしまったスノーボールアース(全地球凍結)という学説をめぐる科学者たちのやり取りのドキュメンタリー。

 

地質学や気象学、天文学や生物学など、様々な分野の一流の科学者たちがいろいろな証拠を集めて綿密に分析し、時に大胆に発想を飛躍させ、スノーボールアースという突飛な学説を支持したり、あるいは批判したりする。

 

これまで科学界ではいくつも革命的な学説が登場した。

 

地動説やニュートン力学、進化論や相対性理論など。

 

どの理論でも共通するのは、当時の常識と大きく異なり、世界観を根底から覆しかねない理論であったがために、多くの人々から批判、否定されたということだ。

 

だが逆に言えば、それだけ世間の注目を集めるだけの存在感と魅力を併せ持つ理論だともいえる。

 

ただ突飛なだけの学説ならいくらでもあるが、真に検討に値する革新的な学説は少ない。

 

それまでの世界観を壊しかねない学説であるだけに、周囲の反応も激烈だ。

 

科学者といわれる人種は、どんな分野にしろ冷静沈着で客観的に物事を判断する人々という固定観念があるが、この本で取り上げられている人々はそんな印象からは程遠く、情熱に満ち溢れ、暑苦しく、時に傲慢で執念深くかたくなに自説を曲げないという人間味あふれる人々ばかりだ。

 

スノーボールアースという一つの学説があまたの科学者の検証を経てブラッシュアップされていくドキュメンタリーであると同時に、それを取り巻く科学者という特殊な人種の群像劇でもある。

 

科学に関する読み物だが、冷徹な論理だけでなく、手に汗握る人々の感情のぶつかり合いも楽しめる一冊。