ざっくり雑記

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どこまでいってもインド

 

近未来のインドを舞台にした共通の設定を下地に持つSF短編集。

 

ロボット兵士や遺伝子改造人間や電脳世界や人知を超越したAIとか気候変動とか、舞台背景や小道具は本格的なSFだが、どんなに時代が進んでテクノロジーが発展しても、インドには血統や伝統や宗教や結婚問題や神様が根強く残っていて、むしろ古来から受け継がれて古びて消え去ってもおかしくないそれらは、新しいサイエンスとテクノロジーを取り込んで所与の個性と力をより強め、むしろ人々を翻弄する存在感は益々増大している。

 

発達しすぎた科学は魔法と見分けがつかないという言葉があるが、インドの日常に溶け込んでいた神秘的な概念や存在が、サイエンスとテクノロジーという肉を得て、世界に現出し、人々を改めて支配していく大きな世界の流れが不気味。

 

インドが持つ、時代に負けない根元的な力を感じ取れる珠玉の短編集。

 

個人的に身をつまされたのは、本書の時代のインドでは、男女産み分けが簡単にできるようになった結果、男女比が4対1にまで広がり、婚活が大変だという描写がことあるごとにクローズアップされる点。

 

それを丸々メインテーマにした短編まで収録されている。

 

インドもそうだが、結婚の大変さも、いくら時代やテクノロジーが進歩しても変わらないんだろうなあとしみじみ絶望する。