人間の限界
臨床心理学者である筆者の人間存在についての随想をまとめた一冊。
臨床心理学の科学的な知見に古今東西の博識に裏打ちされた確かな教養を絡めて、人間存在の様々な側面の森羅万象との相互作用について多角的、多層的に洞察する。
こんなに広範な情報の関係性を明瞭に整理して独自の見解を軸にまとめ、読者の興味関心を喚起する魅力的な文章として完成させている筆力に感服する限り。
というより、この著者の世代の方々の文章力の高さが軒並みすごい気がする。
当時は今よりもメディアへコンテンツを流通させるハードルが遥かに高かったろうから、自然と内容や文章の水準も高いのだろうか。
それとも単純に、ハイレベルのコンテンツだけが数十年を閲して現代の自分の手元まで届くまで形を保てたと考えるべきか。
本の内容に引っ張られて普段なら気にしないことが気になるようになってしまった。