ボーン・クロックス
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圧巻の質量、分量、規模、世界観で開始のゴングからフルラウンド怒涛のラッシュで結末のワンセンテンスまで余すところなくぶん殴り倒される小説。
一人の女性をめぐる数奇な運命を、少女時代から老年期まで、複数の視点から描き出す。
ストーリーが最高に盛り上がる外連味のあるクライマックスよりも、比べると静かな雰囲気のエピローグの方が打ち勝ちがたき過酷な苦境であるという構成で、先が読めない緊迫感とページを繰る手を止められない興趣がしっぽの先までぎっしり詰まっている。
イギリスをメインとした文化的、時代的、地域的背景を濃厚に、それこそ胃がもたれそうなほどぎっとぎとに脂っこい人物描写、状況描写が紙面狭しと行間紙背を食らいつくす密度で詰め込まれており、噛んでも噛んでも後から後から文中の情景のディテールと奥行きが染み出して意識いっぱいにあふれだす。
ところどころ、古今の日本に関する妙にリアリティのある記述が出てくるが、著者の伴侶は日本人で、日本に8年間も滞在していたとのことで腑に落ちる。
映画クオリティで映像化したら絶対に画面映えしそうなシーンが盛りだくさんなのだが、ストーリーのボリュームが仇となって、一本の映画には収まりそうもなさそうなので、望み薄なのが残念。