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マラヴィータ

 

 

マラヴィータ (字幕版)

マラヴィータ (字幕版)

  • メディア: Prime Video
 

恨みを買った同業者から狙われる元マフィアの一家が、FBIの証人保護プログラムで身元を偽り身を寄せたフランスのノルマンディの片田舎で巻き起こすコミカルな騒動や、追手の殺し屋たちとの仁義なき血みどろの抗争を描くコメディ・アクション。

 

ロバート・デニーロ演じる元マフィアのドンは、地域の治安と秩序を暴力と恫喝で維持する度を過ぎた自警団のような古式ゆかしいタイプのマフィアで、作中、終始暴力的ではた迷惑な手段で立ちはだかる問題に対処していく様は荒々しく時に残忍だが、一貫したマフィアの道義に照らしてそれなりの正当性がある報復や制裁であり、思いのほか不快感は薄く、胸がすくような痛快な気分を味わえないでもない。

 

とはいえ、元マフィア一家や追手の殺し屋たちにひどい目に遭わされたり、とばっちりで殺されたりしてしまう周辺の一般住民たちのいわれなき災難には同情を禁じ得ず、証人保護プログラムという法的な後ろ盾と脚本の都合でぬけぬけと難を逃れ、どことなく被害者面までする元マフィア一家の厚遇ぶりと対比すると、理不尽さが先に立ち、小市民的なモラルがちょくちょく水を差して主人公陣営の活躍にもそこはかとない反感を覚え、ひいては純粋な娯楽としての映画の面白さ、特にコメディ部分の面白さを素直に享受できない、なんとも煮えきらない葛藤に陥る。

 

カタギとは一線を画す、生粋のマフィアの重厚な風格と容赦ない暴力性を見事に表現する出演者たちの演技力と、マフィア社会の殺伐とした雰囲気を損なわず、自然にコメディに落とし込んだ演出は素晴らしく、迫力と臨場感で手に汗握る一作。

 

欲を言えば、マラヴィータの活躍をもうちょっと見たかった。