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ボーダーライン

 

ボーダーライン(字幕版)

ボーダーライン(字幕版)

  • 発売日: 2016/08/09
  • メディア: Prime Video
 

 メキシコの麻薬カルテルアメリカの麻薬取締部隊との凄惨な戦いと、曖昧な善悪の彼岸に立たされたFBI捜査官の苦悩を、臨場感豊かに描写したアクションサスペンス映画。

 

本作で描かれるアメリカの麻薬取締部隊は、強大な麻薬カルテルに対抗するために、明らかに違法な他国での諜報活動や襲撃・拷問などの過剰な暴力に手を染めている。

 

以下ネタバレ含む。

 

麻薬カルテルの罠で同僚を殺害されたFBI捜査官のケイトは、CIAの大規模な麻薬取締作戦への参加を打診され受諾する。

 

そこでケイトは、違法行為を取り締まるために、自分たちも違法行為を犯すという本末転倒に陥っている麻薬取締の過酷な現場に直面する。

 

しかも、自分が参加を要請されたのは戦力として期待されたのではなく、なけなしの法的根拠を保証する証明書替わりだと知り、事態に対する無力感と疎外感に打ちのめされ、深い落胆に陥る。(CIAの国内活動にはFBI捜査官のお墨付きが必要らしい)

 

映画の末尾で、ケイトは麻薬取締部隊の外国人部隊員に銃で脅されながら、麻薬カルテルを壊滅に追い込んだCIAの捜査手続きに違法性はなかったことを証明する書類へのサインを強要され、それが偽証であると十分に理解し激しい抵抗感を覚えながらも、渋々サインしてしまう。

 

場所は宿舎の、昼間でも日の届かない奥まった一室で、静かで薄暗く、ケイトと部隊員の会話もぼそぼそとしたとぎれとぎれのささやき声で、いっそ静謐といって差し支えない雰囲気だが、脅迫者の断固とした意志に裏打ちされた本物の殺意と、死への恐怖と法の正義の間というボーダーラインに立たされたケイトの極限の葛藤が混和した、緊迫感みなぎるやり取りの輪郭がより一層際立つ。

 

夜ごと繰り返されるメキシコ住宅街での麻薬組織同士の抗争の銃撃の火花や爆炎の明滅を基地から遠目に眺めて、麻薬取締部隊員が幾分皮肉交じりに「花火」と表現する詩的な言葉と、酸鼻を極め阿鼻叫喚がこだましているであろう現場の凄惨さとは裏腹に、暗闇に沈む街並みを散発的に照らす光のどこか寂しい美しさが印象に残る。