ざっくり雑記

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新本格魔法少女りすか4

最新刊にして最終巻の新本格魔法少女リスカ4を読了。

 

時空と人智を越えたクライマックスを経て、想像の限界を超えた決着へと至る。

 

劇中のセリフ、

 

「待てない者に、奇跡が起こるわけないだろう!」

 

に、思わず快哉を叫びそうになった。

 

前巻から特に大きく開いた刊行間隔に対する読者の心境を明らかに意識したこの一文で、忘却の危機を乗り越えて結末に辿り着いたおよそ10年に及ぶ忍耐が余すところなく報われた。

 

長期の無沙汰を意識したセリフや地の文は他にも多数用意されており、この辺りは首を長くして続刊を待っていた熱心な古参読者への特典にあたるメタ演出として、相応の時を閲したからこそ醸し出せる豊潤な風味と風格を作品に付加しており、こういった配慮だけでも、続刊と完結を待ちに待って絶望寸前にまで追い込まれた甲斐はあった。

 

内容については「やられた」に尽きる。

 

なぜ10歳の魔法少女りすかの変身後の姿が27歳の魔女なのか。

 

なぜ第1作初版発行が2004年の本作の最終巻の発行が2020年なのか。

 

裏表紙でもフィーチャーされたいくつもの「なぜ」が象徴する、奇妙な設定の理由説明や思わせぶりで気懸かりだった伏線の回収が余すところなくものの見事に成し遂げられ、読了後には、壮大な物語が破綻を免れ整然と完結したカタルシスと、渦巻く疑問が塵も残さずことごとく払拭された爽快感しか残らない、理想的な心境に浸れた(ハムスターの件は危うく回収のチェックリストから漏れそうになったが、あとがきでかろうじてその難を逃れており、胸をなでおろした)。

 

本作の設定と伏線と刊行スケジュールが現実の時間経過とタイムスケールとリンクし、オーバーラップし、果てはフュージョンするに至る、10年の空白期間を逆手に取り、初期からの読者の心理をも手玉に取り、募りに募った期待に十全に応えた足掛け17年のストーリー構成には、単なる感動とは別格の畏怖すら禁じ得ない。

 

「時間なんて概念が酷く些細な問題」となる境地へ自然と導かれる、「魔法みたいな十七年」を提供してくれた作品。

 

 年はとってみるものだ。