オーシャンズ13
豪華なキャストを贅沢にあしらった大人気ケイパー映画の3作目。
第1作目からすでにキャストの格と費用の面でのインフレを心配させるほど充実した内容であったにもかかわらず、2作目、3作目とパワーダウンすることなく順当にスケールアップを遂げていることに驚きを通り越した畏怖を覚える。
出演者のキャリアアップとともに、ギャランティ面はもちろんスケジュール面でもメンバーを勢ぞろいさせるハードルは極端に跳ね上がっているだろうに、それが当たり前のようにきちんと一つの作品にパッケージされている時点でちょっと震えてしまった。
やることは相変わらずチーム一丸となっての盗みなのだが、今作は女っ気が薄い男同士の義理人情を主題にした導入と展開で、きらびやかで浮世離れした絵面とは裏腹にストーリーの骨子は硬派なつくりとなっている。
第1作から個人的にその活躍に注目していた双子の扱いが、本作ではこれまでより大きくクローズアップされ、さらに人柄を深堀りするメキシコ工場の賃上げストライキにまつわるエピソードも加わっていて嬉しかった。
本シリーズの見どころである巧妙でダイナミックな盗みの手口は、ついに大地を揺るがす天変地異の規模に至り、画面映えも前2作を完全に上回り、たとえ前2作のこってりとした高カロリーな作風に食傷していても、なお食指を動かさずにはいられない本能に直撃する仕上がりとなっている。
前2作に出演した女優陣は残念ながら今作には出演せず、さすがにそこまではキャスティングが難しかったのでは、と穿った見方をしてしまいたくなる。
だが作品的には逆に、欲を張らず、ジュリア・ロバーツやキャサリン・ゼタ=ジョーンズといった名女優の起用を潔く見送り、男臭さを前面に押し出した硬派な路線一本に絞る決断が功を奏している。
そのおかげで、ただでさえ主役級スターてんこ盛りでかじ取りが難しい本作の統制がとれ安定感が増しただけでなく、前作を踏襲したうえでさらに要素を盛り付けていくシリーズ物についてまわる統一感や一貫性とのトレードオフに陥らずに済んでおり、安心して鑑賞できた。
男臭さが趣味に合わない人には、近年発表された女性オンリーで構成されたチームが活躍するオーシャンズ8が用意されており、シリーズ全体を通すとバランスの取れた構成となっている。
スター性の飛び抜けた出演者たちの妙味を殺さず、見事に調和させたシリーズの掉尾を飾るにふさわしい一作。
できれば掉尾じゃないことを希望してもいる一作。