ざっくり雑記

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人類最強のsweetheart

最強シリーズの第4弾。

 

第一印象は「薄い」。

 

130ページしかない。

 

だが分量の少なさに反して満足感は同シリーズのもっと分厚い他の巻と差はない。

 

驚異的な語彙力と病的な言葉遊びへの愛を誇る作者だが、その弊害として、文章が冗長となり物語の本筋に対して作品全体のボリュームが度を越して膨らんでしまう傾向がある。

 

それが西尾維新という作家の長所の一つであり、多彩で多量の言語表現目当てに作品を求める読者も多い、というか大半なのかもしれないが、やはり読書に要するカロリーが高く、読了するまでにはそれなりの集中力と体力の消耗を覚悟しなければならない。

 

だが本書は従来の最強シリーズのような短編集というよりショートショート集といったほうがふさわしい体裁で、小話のような一口サイズの物語が詰め込まれる構成となっており、人類最強のバラエティ豊かな活躍を、懐石料理やお菓子のアソートのようにつまみ食い感覚で気軽に負担少なく楽しめる。

 

西尾維新ファンの中では少数派である、物語の要点だけかいつまんで楽しみたい派からすると嬉しい仕様だ。

 

強さを題材にした創作物には、どうしてもインフレの危険性が付きまとう。

 

人類最強シリーズもその例に漏れず、趣向を凝らしてインフレの袋小路を回避しつつも、どうしても哀川潤が請け負う仕事のスケールアップを期待せずにはいられない。

 

そういったインフレ対策の一環か、本書の最後には、人類最強の最強たる由縁ではなく、人類最強の人類たる由縁の方に焦点を当てた物語が据えられており、全体の分量の少なさも相まって、一回インフレルートから降りてチルアウトを図る、箸休め的な雰囲気が漂っている。

 

俺たちの戦いはこれからだエンド風の、最終巻バリバリの空気を前面に打ち出しているが、人類最強シリーズは本書の後にも続々続刊しており、次の巻はまた相当のボリュームに戻っていることからも、やっぱり本作は箸休めに当たる巻なのだろう。