ざっくり雑記

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オートマタ

 

オートマタ(字幕版)

オートマタ(字幕版)

  • 発売日: 2016/07/20
  • メディア: Prime Video
 

 人工知能の進化の果て、いわゆる技術的特異点(シンギュラリティ)の先に待ち受ける人類の終末を題材にしたSF映画

 

自業自得で荒廃した環境に適応不全をきたし種としての余命幾ばくもない前世代である人類と、放射能で汚染された新天地へ旅立つ自立した人口知能を搭載したオートマタたち新世代との訣別が、荒れ地に大きく口を開けた断崖というこれ以上なく象徴的な風景を背にして描かれるクライマックスシーンはひどく物悲しい。

 

「最近の若い者は……」という古来からの定型の愚痴は、人類の普遍的な世代間の共感不全を証明しているが、自立した人工知能が生み出した孫世代に至っては、言葉はおろか姿かたちまでいよいよ人類の理解力の限界を超え、絶句のあまり定番の愚痴すら呟けない。

 

自己改良の無限ループに突入した最先端の人工知能が設計した次世代の形状が、数億年前から存在するというゴキブリに落ち着いたのは皮肉が利いている。

 

してみると、人間が叡智を結集し、自然環境の不可逆的荒廃と引き換えに地球から搾取した資源を湯水のごとくつぎ込んで営々と築き上げた絢爛豪華な文明は、ゴキブリに回帰するための壮大な回り道以上の代物ではなかったのか。

 

新世代に置き去りにされ、滅びを待つだけの前世代に残された慰めは、失われて久しい古き良き思い出の情景への逃避ぐらいしかないと提示する寸止めでぶつ切りのラストシーンには、人類がついぞ克服できなかった世代交代につきものの強制引退の悲哀があふれており、センチメンタルで物静かでありながら、思わず身をすくめてしまうほどショッキングでもある。