ざっくり雑記

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マンガでわかる イスラムVS.ユダヤ 中東3000年の歴史

激化するイスラエルパレスチナの紛争の原因を本書で学ぶ。

 

わかりやすいマンガ形式だがわかりにくい。

 

それは同書の出来不出来の問題ではなく、紛争の原因がものすごく入り組み複雑化し錯綜しにっちもさっちもいかなくなっているから。

 

宗教対立と人種問題と領土問題と植民地政策における後先考えない失策と大国の介入と世論の紛糾と利権争いと軍産複合体の飽くなき営利活動と人権問題が、3000年の長きにわたり蓄積し堆積し鬱積し、因縁の質量は恐ろしい規模になっている。

 

イスラムユダヤの因縁の全容を十全に理解している人間などいるのだろうか。

 

かつては中東という局地の紛争だったものが、今や世界を巻き込み、誰もが程度の大小はあれ何らかの形で関係している。

 

遠い異国の他人事ではなく、世界を崩壊に招く蟻の一穴になりかねない。

 

事実、高所から俯瞰すれば、二度の世界大戦もイスラムユダヤの長く広範な紛争の枝葉にすぎない。

 

複雑な問題の解決にあたり、根本原因に遡行して複雑化する以前の単純な段階から順を追い解決を図る手法があるが、イスラムユダヤの対立の根本にはセム一神教の解釈の不一致がある。

 

構造自体は単純な二項対立だが、解決は容易ではない。

 

宗教的信念の対立は感情の対立であり、科学や論理といった理性の立ち入る隙は無く、誰もが納得できる普遍の解決策の策定など無理難題に等しい。

 

同書でも指摘されており、おそらく太古から誰もが戸惑っている不思議だが、心の平穏を得る手段である宗教が、世界で最も長く続く不穏の消えざる火種になっている大いなる逆説は、神ならざる人の身では理解も納得も受容もしがたい。

 

とはいえ、イスラムユダヤのわかりにくい因縁をここまでコンパクトに、しかもマンガにまとめた本書の構成は秀逸の一言に尽きる。

 

わかりにくいと冒頭で述べたが、これ以上わかりやすい本もなかなか想定できない。