映画『オーシャンズ8』女性らしさが随所に光る犯罪映画
どんな映画?
ケイパー(強盗)映画で好評を博したオーシャンズシリーズ最新作。
時系列と世界観は前作を継承しているが、前作のキャストはほとんどストーリーには関わってこず、今度の泥棒チームは心機一転オール女性なのが特色。
前三部作の中心人物であったダニー・オーシャンの妹であるデビー・オーシャン(サンドラ・ブロック)が中心となって一流の専門技術を誇るアウトローをチームアップし、門外不出のカルティエの秘宝、150000000$(一億五千万ドル)相当のダイヤモンドネックレス強奪を目論む。
感想
大筋のストーリーやチームメンバーのキャラクターや役割分担など、オーシャンズ11の忠実な焼き直しで頻繁に既視感を覚える内容だが、キャストを女性に入れ替え、世界観を適合させると、全く違った味わいの作品となる。
本作の前に観た『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』も、女性犯罪者チームを題材にした作品だったが、作風が全く異なる。
『ハーレイ・クイン』がザ・フェミニズム映画で、どうしても男性である自分は観ていて居心地の悪さを感じざるをえなかったのに対し、『オーシャンズ8』は、自立した女性を描きつつ、過度な男性性への攻撃やセクシュアルな要素の抑制といった、フェミニズムに基づく創作上の制約に縛られず、現代の現実的な等身大の女性の魅力を余すところなくストレートにストーリーとビジュアルに落とし込み、エンターテイメントとしてリラックスして楽しめる。
どちらが良いとか悪いとかではなく、前者が女性の未来と理想の具現であり、後者が女性の現在と現実の戯画であるという、時制と次元と描写の相違があるに過ぎず、あとは鑑賞者との相性の問題だ。
オーシャンズシリーズの基本方針を踏襲し、本作のメインキャストも超一流のセレブばかりで、カメオ出演者もこれまた各界のセレブと、頭の天辺から尻尾の先までラグジュアリー&ゴージャス。
舞台はメトロポリタン美術館、シチュエーションはファッションの祭典・メットガラと来るからには、美術とファッションへのこだわりは半端ではなく、特に衣装に関しては、衣装スタッフが特典映像で語っていた逸話によると、主役のサンドラ・ブロックだけでも作中のシーンに合わせて60回以上も衣装をチェンジしていたそうで、作品全体でどれほどの衣装が用意され、TPOに合わせて使い分けられていたのか、その労力を想像するだけで気が遠くなる。
クライマックスで、チーム全員がきらびやかにドレスアップした姿は掛け値なく美しく、感動の溜息が漏れる。
主役級の実力派女優たちが居並ぶ中で、彼女たちを押しのけ存在感を示さなくてはならない、一流女優ダフネ・クルーガーという恐ろしく要求の高い役どころを、臆することなく伸び伸びと見事に演じきったアン・ハサウェイの胆力と美貌とバストに、深い畏敬の念を抱く。
まとめ
女性やマイノリティをメインに据えた近年のコンテンツは、どうしても社会問題に触れずに済ませるのは難しく、ある種の緊張感が陰に陽に内容に影を落とすが、本作では強烈な娯楽の光量がそういった影をホワイトアウトし、心おきなくエンターテイメントに没頭できる。
女性特有の美しさや艶やかさ、それに付随する洗練された美術やファッション、そして男性とは一線を画する犯罪に対するスタンスなど、女性らしさが随所に光る犯罪映画の秀作。
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