ブラック企業の考察
一般的な企業から見ると、社員というのは、「定額支払うと、決まった時間内なら、可能な限り働かせていい労働力」となる。
この雇用の構造は、飲食店の食べ放題と同じ。
食べ放題は定額で、決まった時間内ならいくら食べてもいいというもの。
食べ放題を利用する人にありがちなのは、「元をとる」という考えだ。
時間内に、可能な限り食べる。
これを企業に当てはめると、雇用主は、社員から可能な限り利益をあげようと、時間内で可能な限り働かせようという考え方になる。
食べ放題の場合は、胃袋の容量に限界があるので、いくら時間が残っていても、食べられなくなる場合がある。
だが、企業にはこの胃袋にあたる限界がない。
つまり、給料という代金で購入した社員の時間を、常に一杯まで労働で埋め尽くそうとする。
ここで重要なのは、企業が給料で購入しているのが、社員の「時間」であるという点。
社員が産み出す「利益」ではない。
もちろん、企業は利益をあげるために社員を雇うのだが、社員の能力や社会情勢の影響で、利益は保証されない。
保証されているのは、時間だけだ。
すると何が起こるか。
社員はいくら利益を高めても、労働時間を減らすことは出来ない。
なぜなら、企業が社員から購入したのは、「利益」ではなく「時間」だから。
時間だけは固定され、不変だ。
生産性を高めても、企業は報酬を上げても、労働時間は短縮しない。
これが、退職するまで続く。
利益の上がらない社員は、少しでも「元がとれる」ように時間一杯働かせられる。
利益を上げられる社員は、さらに利益を上げるよう、やっぱり時間一杯働かせられる。
どうあがいても、企業にいては労働時間は縮まらない。
企業という構造には、労働時間を縮める選択肢が、元々組み込まれていないのだ。
だから、心身が壊れるような過重労働が発生する。
自営業の場合、利益が上がっているなら、それを多少犠牲にして時間の余裕に転化することができる。
だが企業では、利益は報酬や地位にしか転化されない。
心身が壊れないようにするには、休みが必要だ。
休むには、時間が必要だ。
だが企業では、いくら働いても時間は手に入らない。
企業が社員から「時間」を購入しているという構造が変わらない限り、社員を壊すブラック起業が生まれる下地はなくならない。