ヤバい経済学
現実を正しく見ると、直感や通念からかけ離れた真相が現れる。
教師のインチキや相撲の八百長、ニューヨークの犯罪率の低下や子供の学力に対する親の影響力などを、経済学のツールを使って分析する。
例えばニューヨークの犯罪率が低下した原因が、画期的な理論(割れ窓理論)に基づくドラマチックな政治的取り組みのおかげではなく、単純な警察官の増員や、あるいはその十数年前に下された中絶合法化の判決に起因することを統計学を使って実証している。
著者は経済学者だが、検証する事例は金銭関連にとどまらず、取り上げる対象の分野には一見一貫性がなくとっ散らかっている。
しいて言えば、著者が言うところの社会の「暗黒面(ダークサイド)」を駆動しているインセンティブが共通点か。
めったに掃除しない家の屋根裏や床下にスポットライトを当てて、暗がりにうごめいていた生き物を片っ端から捕まえてつぶさに観察したような、気味悪く怪しくも、新鮮な驚きを与えてくれる一冊。