紙の中の戦争
戦争文学についてのエッセイ集。
文学作品はほぼ例外なく何かから材を取るが、無限にある材の中でも戦争は豊かな滋養と森羅万象一切を含蓄する妙味を兼ね備えた特級の素材である。
だが同時に取り扱いの難しい素材でもあると筆者は再三言及する。
素材そのままの味を産地から読者の食卓に届けるだけでも図抜けた資質を作者に要求する。
その難しい素材にあえて挑んだ料理人、あるいは挑まざるを得ない精神状態に追い込まれたサバイバーたちの腕前と料理について、その原子の一粒までなめ回ししゃぶり倒し味わいつくしたかの如き執拗なまでに精緻な感想が本書にはぎゅう詰めに詰め込まれており、読後、しばらくは頭がもたれてぼうっとしてしまった。