ざっくり雑記

ざっくりとした雑記です

故郷の味は海をこえて

日本に滞在する難民の人たちを個別に取り上げて、その背景と、食文化を紹介する。

 

難民となった人たちを追い詰めた母国の状況や、難民受け入れのハードルの高さには定評のある日本の入国管理制度の問題点等をひっくるめた難民問題と、なじみの薄い異国の食文化、それぞれのトピックは重要で興味深い題材ではあるが、それらを一つにまとめることでどのような表現上の効果を狙ったのか、いまいちよく伝わってこない。

 

いわゆる難民を、「難民」というステロタイプの言葉でパッケージして隔絶せず、それぞれが異なる事情と個性を持つ一個の人間として受け入れるべきだというメッセージを伝えるために、個人のディテールを掘り下げる糸口として食事に注目したと解釈したが、難民問題という包括的な事象と、食事という分野的な事象の間に存在する次元の隔たりが埋められておらず、それぞれが孤立したまま並列され、整理されていない印象が先立ってしまい、肝腎の主題がぼやけて見える。

 

具体的には、難民となった人たち自身が母国や自分を襲った悲惨な状況を情感たっぷりに陳述した次のページで、おいしそうな料理がきれいな写真とともに生き生きとした描写で食レポされていると、難民問題に真摯な関心を持ち行動を起こすべきか、食欲をそそる料理に生唾を飲み込みつつ近所のエスニック料理店をググるべきか、情緒が混乱をきたす。

 

とりあえず、世界には日本では全くと言っていいほど取り上げられない深刻な人道的問題が山積しており、日本もそれらとは無関係ではいられないということと、茶色い食べ物はなじみが薄い国のものでもとてもおいしそうに見えるということはよくわかった。