ざっくり雑記

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国家の命運

外交の第一線で働いた元外交官の、現役時代にかかわった外交問題の振り返りと、自身の経験に基づくこれからの外交政策の提言を述べる一冊。

 

結果ばかりがマスメディアで派手に喧伝される割に、その裏側で何が行われているのか、機密を前提とする実務であるがゆえに世間には出回らない外交交渉の内幕と、当事者である外交官から見た外交の実態を、外交問題にならない程度に覗き見ることができる。

 

題名にもある「国家の命運」を左右する外交交渉が、数百人規模になるとはいえ、影響を被る諸国民の人口からすればはるかに少数の人間同士がやり取りすることで決定されるダイナミズムに不思議な感慨を覚える一方で、生身の人間の感情やヒューマンエラーが政治決断に決定的な役割を果たしてしまう怖さを抱かずにはいられない。

 

外交交渉の実際をかいつまんでわかりやすく説明してくれているが、それだけでも、恐ろしい情報量が飛び交い、複雑怪奇に入り組んだ各国の利害関係を調整してタフな交渉に連日連夜臨まなければならない外交官の気の遠くなる労苦がしのばれる。

 

他のケースにも当てはまるが、ある人物や組織の決断や行動の内情を深く知ると、安易に非難したり解釈できなくなるが、この本を読むと日本の外交について、素人考えでは簡単に意見を述べづらくなってしまった。