ざっくり雑記

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現代版 夜と霧

11歳で誘拐され、その後18年間もの長きにわたり監禁・拘束された女性の手記。

 

想像もつかない過酷な環境から、11歳の少女が生還したということにまず驚き、そして辛く苦く恐怖と屈辱で塗りつぶされた18年分の記憶を自ら詳細な記録に起こし公表したということにさらに驚く。

 

本書の内容の大半は、常軌を逸した誘拐犯が一人の少女に与えた残虐な苦痛の記録であり、興味深くはあるものの読むのに息苦しさに似た閉塞感を覚えた。

 

要所に挟まれる誘拐前の屈託のない少女時代の彼女の写真がさらにその閉塞感を対照的に強調する。

 

彼女は監禁・拘束中に誘拐犯に凌辱され、二人の子供を妊娠・出産する。

 

これほど過酷な環境にあって、子供への愛情や思いやりを持てる彼女の母としての強さには驚嘆しかない。

 

彼女が陥った状況から連想したのは、ナチス強制収容所を生き抜いたユダヤ人心理学者ヴィクトール・フランクルの体験記「夜と霧」。

 

四六時中常軌を逸した人間に心身を虐待され続け、明日余も知れぬ身の上というのは、ナチス強制収容所と大差ない悲惨極まりない苦境中の苦境だが、その苦境にあって、小さな希望や意味を拾い集めて一日一日を生き抜いてついに生還した彼女の姿はヴィクトール・フランクルを想起させる。

 

生々しく痛ましい描写が大半を占める本書だが、監禁・拘束から解放された後、彼女とその娘たち、再会を果たした母親と妹などが多くの人々の助けを得て、あるべき日常を取り戻していく様子も描かれており、それが後味を明るくしていてくれて助かる。