ざっくり雑記

ざっくりとした雑記です

ブルシット・ジョブ

 

大半の労働者が仕事に対して感じている普遍的な不満、つまり、なぜ仕事はつまらなくてやりがいがなく苦痛すら感じるようなものなのか、という悲しいことに空気のごとく常在する常識となってしまっている前提の正体や原因について、傑出した人類学者が調査・分析して問題提起した本。

 

なぜ仕事はつまらなくてやりがいがなく苦痛すら感じるようなものなのか。

 

それは、大半の仕事がつまらなくてやりがいがなく苦痛すら感じるようなものだからだと、著者は世界中から寄せられたブルシット・ジョブに従事する人々からの報告を詳細に検討してその要諦を概念化する。

 

テクノロジーが格段の進歩を遂げ、あらゆる産業の生産効率は飛躍的に向上しているというのに、人々は21世紀も5分の1を経過したというのに、まだ週40時間も働きストレスと疲労を溜め込んで定年まで生きるという産業革命以降さして代わり映えのしない日常に甘んじている。

 

単純に生産効率が10%改善すれば、働く時間も10%減るはずなのに、その単純な計算に現実という変数が混入すると途端に代わり映えのしない同じ解だけを吐き出すようになってしまう。

 

その原因を著者は人類学や経済学、歴史や宗教や政治といった様々な視点から鋭い洞察のメスを入れ、精密に摘出して日のもとに引きずり出していく。

 

読むと、自明の概念と思われていた労働という日常を形成する巨大な一要素に対する認識が一変する、パラダイムシフト必至の一冊。