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シャイニング

 

シャイニング (字幕版)

シャイニング (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 斧で壊されたドアの裂け目から狂気に満ちた満面の笑顔をのぞかせるジャック・ニコルソンのキービジュアルが印象的なホラー映画。

 

大雪で閉鎖される山上ホテルの冬季管理人として雇われた作家志望の男が、そのホテルに救う悪霊らしき存在にそそのかされ狂気に陥り、妻と息子を襲うというホラー。

 

正直なところ、あまり怖くなかった。

 

というのも、狂気の殺人鬼と化したジャック・ニコルソン演じるジャックの、モンスターとしてのパラメータが低く見えてしょうがなかったから。

 

ホラー映画では、恐怖の対象が圧倒的な優位によって被害者を脅かす関係性が基本だと勝手に思い込んでいたが、本作ではそうでもない。

 

確かに被害者であるジャックの妻と息子は終始ジャックに脅かされるが、意外にも先制攻撃は妻だし、しかもこれがとんでもない有効打となってジャックに大ダメージを与えるため、実際にジャックが妻と息子を殺そうと逃げる二人の後を追うパートでは、痛めつけられた後遺症でまともに歩けずふらふらになっており、怖いというよりはむしろ痛々しい。

 

また、逃げ惑う妻の機転はことごとく功を奏し、恐怖に動転し慌てふためいている割には、逃げ込んだ部屋の鍵を忘れず用心深くことごとく施錠するので、ジャックはドアを突破するためにいちいち重たい斧を傷ついた体で振り回さねばならず、なかなか妻に追いつけない。

 

キービジュアルになっている、ドアの裂け目から顔をのぞかせる名シーンも、結局そのドアを突破しようと裂け目から手を突っ込んだところを妻に包丁で切り付けられ撃退されるという、しょんぼりな結果に終わっている。

 

そういう意味で出色だったのは、狂気に陥ったジャックが、妻に殴られ気絶し閉じ込められた倉庫で、悪霊から戦力外通告をされ、必死に続投する意欲をプレゼンするシーンで、思わずジャックを応援してしまった。

 

レビューを読むと、かなりカットされたシーンがあるようで、ジャックが元々持っていた暴力性や残忍な性質が、決定的な狂気に至るまでの心の変遷の描写が少なくなってしまい、結果として本作のホラー要素の主な焦点である人間心理の恐ろしさが軽減し、間の抜けた殺人鬼の敗北という、皮相の顛末だけが目につくようになってしまったのかもしれない。

 

全編通して一番怖かったシーンは、冒頭の、ホテルの冬季管理人として支配人の面接を受けるジャックが、狂気を抑制して普通の人間を演じているかのようなこわばった作り笑いを浮かべるシーンだった。