今日は死ぬのにもってこいの日
ネイティブアメリカンの口伝や詩、語りを著者が聞き取ってまとめたもの。
エマソンが難解な思考過程を経て立ち返ることができた神の教えの本質と恐らく同質と思われる世界の真理を、単純明快な言葉と印象深いイメージの組み合わせで表現している。
エマソンが生まれ育った西洋社会が2000年かけてしっちゃかめっちゃかにしてしまい、跡形もなくなっていたキリストが悟ったのと同質の世界の本質を、ネイティブアメリカンは部族単位で大人から子供まで理解し、生活に落とし込み、実践し、長年に渡り保持するという離れ業をやすやすとやってのけていたことが如実に分かる。
エマソンとネイティブアメリカンは同じことを語っているのだが、エマソンは2000年かけて絡みに絡みまくったしがらみをかき分けてそこに到達しなければならなかったがために、数多の言葉を費やしいくつもの分野を股にかけた博識に頼らなければならず、冗長で婉曲で不格好にしか表現できなかったものを、ネイティブアメリカンは僅かなセンテンスで美しく鮮やかに詠う。
ネイティブアメリカンの文化を壊滅状態に追いやり、現代世界を席巻する西洋文明の栄華が空疎であることを間接的に痛感させられる。