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ギャングバスターズ

 

ギャングバスターズ (字幕版)

ギャングバスターズ (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 悪徳警官子飼いの極め付きの凶状持ち三兄弟が、紆余曲折を経て、わが身を顧みず障碍者の少年をギャングの魔の手から救い出す、B級っぽいのに結末はなぜかハートウォーミングなアクション映画。

 

筋骨隆々で銃をあいさつ代わりにバンバンぶっぱなし、小遣い稼ぎのお遣い感覚で人を殺す危険なチンピラの模範のような三兄弟が、車いすからほとんど動けない重度の身体障碍者である少年を命懸けで守るという、ともすれば人物設定の破綻に興ざめするストーリーが、アクション映画の怒涛の勢いと絶妙に調和した丁寧な心理描写によって説得力を持って描かれ、違和感なく視聴者の涙腺を緩ませる。

 

これ以上なく暴力的で強靭で、弱者を恣に蹂躙する刹那的な生活に何の疑問も持たない三兄弟が、これ以上なく非力で依存的な正反対の存在である障碍者の少年に過剰なまでに感情移入し、多勢を誇る凶悪なギャングを向こうに回して命懸けで守る覚悟を決める理由は、三兄弟と少年が、他人の都合に人生を支配される境遇に閉じ込められているという点で、まったくの同類だからだ。

 

一見自由奔放で享楽的な三兄弟だが、身寄りのない幼少期の彼らを拾った悪徳警官から汚れ仕事を委託され細々と食いつなぐ都合のいい手駒以上の何者でもなく、それ以外の人生の在り方を想像すらできない窮屈な奴隷状態にあり、やるせない鬱積を抱えている。

 

積み重ねた悪行と次々に舞い込む危険な任務から逃れられない人生は、ろくでもない末路に向かって勢いを増して驀進しているのが明白なのだが、その運命に抗う三兄弟の意志は暴力で充溢した自堕落な暮らしですっかり萎えており、彼らはただただ破滅へ向かう日々を酒とドンパチで誤魔化しながら空費する生活に甘んじている。

 

莫大な遺産を狙うギャングになすすべなく監禁される少年の境遇は、三兄弟の目には、自分たちが身を置く八方塞がりの境遇の同工異曲に映る。

 

三兄弟が誇る暴力は、同時に彼らを悪徳警官の奴隷状態に貶め拘束する忌まわしい呪縛でもあるが、少年の救出は、彼らの暴力に、ひいては暴力に染まった彼らの半生に、初めて正当な意義を与える。

 

障碍者の少年を四人目の兄弟になぞらえるシーンやセリフの数々には、マンガみたいに現実離れしたビジュアルとキャラ付けの悪党同士が欲望のままに殺しあうアクション映画とは不釣り合いな繊細で複雑な万感の想いが詰まっており、不意に切ない気持ちを喚起する。

 

他人を傷つけるどころか自分の人生まで狂わせる暴力が、同工異曲の不遇にある他の誰かを救う有意義な力として活躍し、廻り廻って逆説的な自己救済へ反転するパラダイムシフトのカタルシスを、銃声と阿鼻叫喚をBGMに味わえるなかなか類を見ない作風の映画。

 

 障碍者の少年が、自身を危機的境遇に追いやった元凶である莫大な資産を使い、逆に三兄弟に更生の道を拓くラストシーンは、少年もまた三兄弟同様の経緯を経て自己を救済したことを示し、すっきりした余韻で物語は後味よく幕を閉じる。

 

しっぽの先まで行き届いた作りこみに大満足。