人生の短さについて
2000年前のローマの政治家、セネカの「道徳論集」の中の3篇をまとめた一冊。
時間と平静と幸福についての哲学を述べる。
簡潔明瞭な論理と豊富な(2000年前の)事例で補強した各主張はすんなりと理解しやすい。
というか、2000年前のローマと現代日本の社会情勢を引き比べても大した違いがないので、理解に苦しむところがほとんどない。
むしろあるあるネタのまとめサイトを眺めてる感覚を読んでいて覚える。
現代との大きな違いである奴隷制度に言及する箇所も、奴隷をブラック企業の社員やワーキングプアに置き換えるとほとんど違和感がない。
もしかすると、いや、もしかしなくても、2000年前から、洋の東西を問わず、人間とその集合である社会の本質はほとんど変わりがないのかもしれない。
奴隷制度はなくなっても実質奴隷と同じ境遇の人々は名を変えマイナーチェンジして存在し続けるし、パンとサーカスが娯楽の一線から退いても、インスタとYou Tubeがその座をすかさず埋め、人々の時間を貪り食う。
セネカは自然に従って生きろというが、セネカが煩わしく忌避した奴隷制度やパンとサーカスの後継者が引きも切らさず連綿と現代まで受け継がれているところを見るにつけ、こういった事象もまた人間の自然の一部なのかもしれない。