ざっくり雑記

ざっくりとした雑記です

体癖

独自の理論に基づく治療を行う整体の大家、野口晴哉が展開する体癖論の解説書。

 

「体癖」とは野口晴哉の造語で、有効な治療法を決定する上で把握すべき、個人個人で異なる運動傾向や体質の分類を意味する。

 

体癖という概念の独特な点は、精神面と肉体面を不可分一体のものとして関連付け、その性質や傾向を運動という動的な観点から読み解く試みにある。

 

著者の治療経験則に基づく分類のため、厳密な意味での科学的な根拠には乏しいが、著者の療術師としての卓越した観察力と洞察力、膨大な症例経験から自ずと導き出された分類には、自信に裏打ちされた強烈な説得力のオーラがある。

 

一応分類それぞれに振ってある番号に従って章立てされ、順序だって解説されるが、話題が後先に縦横無尽に飛ぶため、著者の治療理論についてある程度親しんでないと混乱してしまう。

 

内容はところどころに思い当たる節があり、記述に沿って体を動かしてみると、新鮮な感覚を味わうことができた。

 

特定の体癖にピッタリ当てはまることはなかったが、それぞれの項目で取り上げられている体癖の例がいくつか当てはまった。

 

人間の体癖は色々な要素が混在しており、その濃淡はあれど厳密な有無で区分できる要素の方が少ないのかもしれない。

 

また、体癖の分類にはその時々の体調の波でによる下位分類も加わるため、最終的な項目数はかなり細かくなる。

 

分類と言いつつ整理が不十分な印象を受けるが、この場合、それだけ人間という存在が複雑な要素から構成される多様な存在であると同時に、その多様な複雑さに分け入り詳細に探索しきる著者の並外れた観察眼の鋭さと飽くなき治療への情熱の証左であるように思える。

 

人間の見方が少しだけ、しかし根本の部分から変化する一冊。