ざっくり雑記

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Meet Dave

 

Meet Dave (字幕版)

Meet Dave (字幕版)

  • メディア: Prime Video
 

 エディー・マーフィー型の宇宙船に乗ったエディー・マーフィーを船長とする小人サイズの宇宙人たちが地球にやってきて数々の騒動を起こすエディー・マーフィーらしいSFコメディ。

 

異種と異文化のファーストコンタクトとコミュニケーションをテーマとしたコメディという設定だけでも(そしてエディー・マーフィーというだけでも)、コラボレーションの妙味から生じる喜劇的なドタバタが容易に期待できるが、さらにその設定に異尺、つまりスケール感のギャップまで突っ込まれた盛りに盛った設定とストーリーは、同類の他作とは一線を画す水準へと本作を押し揚げている。

 

映画の醍醐味の一つに、物語中の登場人物それぞれの視点からは伺い知れない物語の全容を俯瞰して眺めたり、あるいは物語中に現れる複数の立場に身を重ねてそれぞれの観点から状況を多角的に捉えるといった、いわゆる神の視点を楽しむ視聴者だけに許された特権があるが、本作の見どころは、その神の視点のジェットコースター的転変だ。

 

地球上の同じ文化圏に属する人間を任意に二人選出して交流させたとしても、そこにはカルチャーショックと称するに値する看過しがたい個性の不和が生じるに十分な内外面の差異が常に存在するが、任意の二人が地球人と異星人ともなれば、その差異の度合いは尋常ではなくなる。

 

本作でも地球人たち、それもかなり個性的な連中と、エディー・マーフィー扮する「船長」をリーダーとする、これまた個性的な異星人の一団の、エディー・マーフィー型の宇宙船兼インターフェースを介した、多種多様で異種異様な思惑や個性の宇宙規模にちぐはぐな交錯が、吃驚な人間模様を織りなし笑いを誘う。

 

その著明に異なった精神面の交流を舞台とした散策だけでも、神の視点を有する視聴者は十分に楽しめるが、そこにさらに著明に尺度が異なった物理空間という軸が導入されることで、神の視点の可動域は二次元から三次元へと拡張し、視聴者の神の視点は平面的な水平移動の制限から解放され、桁違いの自由度を有する立体的な空中遊泳が可能となる。

 

地球人サイズからしてみればただ通り過ぎるだけのなんということはないニューヨークの街頭でも、小人サイズの異星人からしてみれば、道行く地球人たちは地響きを立てて闊歩する巨人の群れだし、道端にへばりついたガムの塊は一度捕まれば容易に逃れられない鳥もちトラップだし、風に吹かれて路上を漂うビニール袋は大空へ飛び立つ気球になる。

 

そういった地球人の視点と異星人の視点が、精神面でも物理面でも転換し錯綜する様子が演出やカメラアングルによって巧みに表現され、かといってその息をもつかせぬ慌ただしい転換の接続は円滑で不自然さを感じさせず、視聴者は乗り心地のいいジェットコースターに据えられた神の視座に胡坐をかいて、単なる狂乱と紙一重の計算された混乱をリラックスして観賞できる。

 

 ラストシーンは特に素晴らしく、地球人サイズでしかないはずのエディー・マーフィー型宇宙船が、演出とカメラアングルによって、見上げんばかりに壮観な巨大ロボットのように描写され、小人サイズの宇宙人が主役ということもあり、ラストシーンの直前までミニマムな世界観を基調としていた作風とのギャップもあってか、その錯覚との落差から生じる迫力と格好良さはすさまじく、ちょっと鳥肌が立ってしまった。