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逆説の日本史 古代黎明編

独自の視点で史料を分析し、日本史の定説を覆す「逆説の日本史」を提唱するシリーズの一冊目で、本書では神話の元となった古代が取り扱われている。

 

およそ30年前の本なので、記述内容を現在判明している歴史的事実とか解釈と照らし合わせたらいくらかの齟齬があるかもしれないが、本書で指摘されている現代社会の限定され偏向した価値観で過去を解釈することで、実態からかけ離れた誤った歴史認識に迷い込む危険性をはらんだ学界の傾向は、いつの時代でも用心しなければならない教訓として今でも通用する。

 

定説を否定し、逆説に至る道筋を説明する文章の論理は明瞭で説得力があり、かつ小説家らしい牽引力のあるドラマチックな文体と構成でぐいぐいと引き込まれる。

 

受験対策の学校の授業では、時間的な制限や思想的な偏向を回避するためにオミットされる歴史のドラマチックな側面が前面に押し出され、退屈な教科書の中の歴史とは全く印象を異にする、刺激に満ちた逸話や仮説が次から次に目まぐるしく飛び出してくる。

 

歴史を紡いできたのは血の通った人間であるという当然の事実に気づき、その魅力に改めて向きあえる入り口となる一冊。